カラハリの夜明け - Masa a Kgalahadi: Dawn of Kalahari -

ボツワナにJICA SVとして派遣される記録

フンコロガシに魅せられて

フンコロガシ

生物学が好きな人なら、幼少期に読んだファーブル昆虫記(Fabre's Insect Book)を読んでワクワクした経験があるのではないでしょうか。

残念ながら日本には丸い球を作ってコロコロ転がすフンコロガシはいません。留学先のミネソタにもいませんでした。
センチコガネやダイコクコガネなど、そのたの糞虫はもちろんいますけどね。

アフリカや欧州にはフンコロガシがいるというので、いつか出会えるのを楽しみにしていました。

2月下旬にボツワナ1周の出張を終えるころ、Jwanengの入り口で小休憩を取っていたらフンコロガシがいました!!!

もう大興奮です。
つつくと死んだふりをすると知りませんでした。おもしろーい。

新鮮な牛糞に飛んできて、かき集めて糞玉を作ります。

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もう球になったからいいんじゃないかと思ったら、気に食わないのかまだ掻き集めていきます。そして動き出したと思いきや、戻ってまた大きく整形しなおします。

 

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この回りだしてから「あれ、ちょっと待てよ、無し無し。」って雰囲気がとても面白いです。

確かに自分のサイズに対してベストサイズはあるわけです。それを間違うと幼虫の養育房にもなる糞玉が足りなかったりすることになりかねません。

やがて満足サイズになったのか、糞玉を転がしていきます。

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先の糞玉を転がしだしたけど、やっぱりやめたと戻すときやどんどん糞塊から遠ざかっていく時に疑問がわきました。フンコロガシは方向を理解するメカニズムを持っています。匂いか、それとも太陽光か。ファーブルはこの方向を知るメカニズムについて調べていたっけ。ちょっと思い出せません。

アフリカに来たら見たいと思っていたフンコロガシですが、牧畜王国のボツワナでは意外と簡単に見つけることができました。まだ私の任期は始まったばかりですので、引き続きフンコロガシを探し回ってみます。

ちなみに糞玉を作らないタイプの糞虫も何度か見かけているので紹介しておきます。 

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飛び立つところを撮影しました。

展望台に上ったら同じように緑色の糞虫がいました。

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糞虫はいろいろいますが、日本にもいるセンチコガネのように非常に美しい光沢の種がいます。

 

フンコロガシの社会価値

世の中には要らない生き物などいないと言いますが、フンコロガシは面白いだけではなく生態系の中でとても重要な役割を果たす昆虫です。

例えば地球にとってあまりにも役に立たない人間のことを皮肉を込めて「ウンコ製造機」と言う人もいます。そう、私たちはみんな生態系の輪を回すために食事をしてウンコを作り出していて、そのウンコが土に還って生態系を豊かにするのはよく知られています。
このウンコをより細かくし、地下に埋め、植物の育ちやすい土壌を作るためにフンコロガシがとても役に立っています。さらにウンコに含まれるあまり好ましくない微生物や寄生虫による被害も食い止めてくれる役割を果たすので、牧畜業にとっては無くてはならない存在です。

ところが近年、飼料に抗生物質などの薬品を混入させて病気を防ごうという試みが増えていることがフンコロガシにとっては大きな脅威になっています。毒入りの餌を食べた牛の糞は、やはり毒入りの糞なのです。この毒性によってフンコロガシの生態系が脅かされています。

フンコロガシがいる社会は、地球循環がきちんと回っている健康的な社会です。
ウンコをウンコと簡単に片づけるのではなく、生態系を巡る栄養の形として捉えなおしてみてください。
もちろん医学的にはウンコは健康のバロメータとして重要な指標にもなります。
途上国に生活をする多くの仲間たちには、ウンコを見つめ直す機会にしてもらえたら嬉しいです。

フンコロガシの糞玉づくりは観察していても20分ぐらいしかかかりません。牛糞はそんなに臭くありませんから、機会があったら牛糞を観察してみてください。

「うちには変な日本人がいる。あいつはウンコをじっと見つめているんだ。わざわざ日本からやってきてウンコを見ている。どうしたと訊いたらフンコロガシが面白いんだと。あの日本人の方がよほど不思議だよ。」

そんな風に日本人が誤解されるように引き続きがんばっていきます。